内大臣林道の大規模林道への変更に関わる要望書


 日本昆虫学会は会員約1400名を擁する昆虫研究者の学術団体です。本会では、昆虫類の多様性が近年、急速に低下していく状況に対処するために学会組織内に自然保護委員会を設置し、その維持のための活動を続けてまいりました。生物の多様性が低下しつつある現状はご存じのとおりですが、これはいうまでもなく、生態系の機能を損ない、人類の生存を脅かす憂慮すべき事態であります。とりわけ昆虫類は、あらゆる生態系において圧倒的な多様性を示し、生物の生存基盤であります食物連鎖の維持に重要な役割を果たしています。しかし、森林の伐採や各種開発などにより各地で多くの昆虫類の生息場所が失われ、環境省が2000年に公表されたレッドリストには393種が絶滅または絶滅の恐れのある種として掲載されています。
 熊本県矢部町の照葉樹林原生林の峡谷を走る内大臣林道は現在に至るまで長期にわたって安定した未舗装の林道で、交通量も少なく、道路や周辺の工事も行われず、周囲の生態系に大きな変化を与えてまいりませんでした。しかし、今回この林道を大規模林道にする拡張工事が行われるとの報道が「熊本日々新聞」(2001年3月31日付け)に掲載されました。この工事は上記環境省の絶滅危惧T類にランクされているゴイシツバメシジミとその食草シシンラン(絶滅危惧TB類)、ベッコウサンショウウオ(準絶滅危惧)などの絶滅危惧種をはじめ、内大臣渓谷の照葉樹林上部および夏緑樹林下部の極めて生物多様性の高い原生林および成熟した二次自然林を主体とする生態系に対して破壊的な影響を及ぼす危険性が著しく高いと考えられます。このような生物多様性の豊かな生態系は稀少であり、一旦これが破壊の方向に向かうとそれを回復する手だてはありません。
 このような理由から、本会は内大臣峡の大規模林道への変更計画の見直しを直ちに決断されるよう、切に要望いたします。


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